お祭り

ベットに入ろうとして二階に上がる階段を登っていると、不意に、二階の寝室からものすごく懐かしい匂いがした。季節が変わって新しくなった敷布団と、ベットの物入れの木の匂いが入り混じったような。懐かしくて、暖かかった。安心できた。そんな時、頭に思い浮かんだ情景は、今住んでる家でもなく、前住んでた家でもなかった。それは、父方の祖父母の前の家だった。僕が12歳くらいまで建ってた家。今はもう無い。

 

今思い返せば、あの家のことは凄く覚えていることがわかった。家の構造、部屋割り、あそこであった出来事、遊んだ人、食べたもの、景色、雰囲気。なにもかも、今は無くなってしまったけれど、こうやって思い出せたから、やっぱり思い出って、頼もしいよなぁと思った。

 

祖父が食べている豆腐の醤油がけを一口もらうのが楽しくてしょうがなかったのを覚えている。いとこの4つ上の男の子と2つ上の女の子と一緒に遊んだり、雑魚寝するのが本当に楽しかった。玄関から一階に上がるところが妙に段差が高かったな。父の兄もそこに住んでた。壁にでかいアメリカの国旗が飾ってあった。端の方の部屋にはちょっと怖い部屋があったっけ。キッチンと廊下を繋ぐ扉の上に不思議な何かが吊るしてあった気がする。紫と白のドレスを着た御人形さんがいっぱいあった。きつい坂を登った先にあったんだよ。あの家は。あの時間は。

 

楽しかったなぁ。