金縛り

山の斜面に沿ってできた日本式の街並みが見えた。瓦と石垣と提灯とお屋敷と、あと何があったっけ。一回全部を黒で潰して、そこに青やら黄やらの絵の具を塗っていったみたいに、ただ、広い海だけが残る夜。僕はただ、海を見て、泳ぐ魚に移入したつもりでいる、廊下脇の、1つのシミだ。

 

 

追いかけたいものも、もう何にも無くなって。胸に残るのは、錯覚の記憶だけ。

 

 

 

ああ確かその町の上には、でっかい月が出てたっけ。あれにこれから、誰が目指すだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ今日ぐらい、誰でもいいから「かわいそう」って言っておくれよ。